こんにちは。東北のフォトグラファーのzookomiです。
この記事では知っておくべき8人の日本人写真家を紹介します。
現役の写真家から伝説の写真家まで、写真を始めたら知っておきたい方ばかり。
今回紹介する写真家は、中でも特に独特な表現やテーマ性で、多くの人を魅了してきました。
写真家を知り、作品に触れ、解釈することで自分の写真も昇華していきます。
私自身、写真家たちの視点に触れることで、実際に見る視点が変わってきています。
思考しながら撮るのか、直感的に撮るのか、ピントが当たりブレのない写真が正解なのか。
様々なことを考えて撮るようになりました。
- より写真を楽しむことができる
- 写真の視野が広くなる
- 写真で表現する意味がわかってくる
- 自分の写真が変わるきっかけになる
それでは早速行きましょう!
川内倫子
- 1972年 滋賀県生まれ
- 木村伊兵衛写真賞など多くの賞を受賞
- 淡い写真が特徴的
- 作品テーマ:日常の中の「生と死」
- 代表作:『うたたね』『花火』など
- 写真展も精力的に開催している
川内倫子さんは淡い写真が印象的な写真家。
淡い雰囲気がすてきなだけではなく、写真を通して表現された世界観がすばらしいです。
写真を通して「生と死」を表現しており、そのテーマを意識しながら観る写真集は、読後にずっしりとのしかかる何かがあります。
繰り返し観て、考え、感じることのできる作品ばかり。
より詳しく知りたい方は、ホームページをチェックしてみてください。
月一回連載されている「川内倫子の日々」というページもあり、川内倫子さんの言葉と写真で日々感じることや家族のことなどが綴られています。
おすすめの写真集も紹介します。
『うたたね』
- 発行年:2001年
- 発行:リトルモア
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:B5変型
- ページ数:128ページ
川内倫子さんを世に知らしめた代表作『うたたね』。
『うたたね』は、日常の何気ない風景や見落としがちな草花、小さな虫たちをテーマにしています。
日常の美や、生と死の対比、抽象性など、観れば観るほど考えさせられつ一冊。
言葉はありません。
写真の配列、流れ、作者の意図を考えなら読み進めていくことで湧いてくる感情。
なんとなく汲み取れた時の「ぞわっ」とする感覚。
名作中の名作。
『花火』
- 発行年:2001年
- 発行:リトルモア
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:B5変型
- ページ数:64ページ
『花火』は川内倫子さんが日本各地の花火大会を巡り、その瞬間的な美しさを捉えた作品です。
この作品は夏の夜風、子供たちの声や足音、露天の雰囲気、美しさと儚さを写真を通して表現した一冊。
花火を通して、想像できる人々の感情。
フィルムのブレやノイズなども相まって様々な思いなどを感じることができます。
『as it is』
- 発行年:2020年
- 発行:torch press
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:230mm×180mm
- ページ数:144ページ+テキスト差し込み18ページ
『as it is』は2020年に出版された写真集。
自身の出産から3年間にわたる子育ての経験を独自の視点で通して撮影された作品。
子供の成長とともに、自然との関わりや子供に導かれて新たに世界と出会う過程が描かれています。
川内倫子さんの「身近」に焦点を当て、子供を産んでからの変化がよりわかる作品です。
牛腸茂雄
- 1946年 新潟県生まれ
- 病気により成長が止まり、背中が曲がる障害を抱えていた
- 作品性:人々の日常的な表情や身振りの中に、文化と文化、時代と時代の接点、人と人の出会いが生む「きわ」を捉えようとした
- 代表作:「SELF AND OTHERS」など
- 1983年に亡くなる。死後作品は評価され続けている
牛腸茂雄さんは「コンポラ写真」の代表的な作家。
10代から美術展やポスター展に入選し、才能を発揮していました。
デザインの仕事と並行して写真も撮り続け、その集大成として『Self and Others』を自費で出版しています。
この作品は、日本写真協会賞新人賞を受賞しました。
牛腸茂雄さんの作品は、人々の日常的な表情や身振りの中に、文化と文化、時代と時代の接点、人と人の出会いが生む「きわ」を捉えようとしたもと評価されています。
死後も、写真は評価され続けています。
『Self and Others』
- 発行年:1994年
- 発行:未来社
- 製本:ハードカバー
- サイズ:235mm x 205mm
- ページ数:114ページ
代表作『Self and Others』は、友人・家族・子供たちのさりげないポートレートが中心の作品です。
被写体との不思議な距離感、被写体の自然な姿に見えつつも、違和感を感じる写真で見る人の興味を引き付けていきま。
見た人にしか経験できない「何か」を感じることができる作品です。
決して派手とは言えない写真ですが、印象に残る独特の雰囲気を持った写真集。
『牛腸茂雄全集』
- 発行年:2022年
- 発行:赤々舎
- 製本:ハードカバー
- サイズ: 245mm × 255mm
- ページ数:248ページ
『牛腸茂雄全集』は現在、牛腸茂雄の全体像を俯瞰できる作品が現在入手しにくいことから、刊行された一冊。
生前に刊行された4冊の作品集『Self and Others』などの全点と、生前に発表、もしくはまとめられた 2 つの連作〈水の記憶〉〈幼年の「時間 」〉全点が収録されています。
代表作を観るもよし、全集を観るもよし。
牛腸茂雄のベスト写真集的なものです。
ただ、ページ数も多いので、寝転がりながら観るなどは難しいかもしれませんね。
深瀬昌久
- 1934年 北海道生まれ
- 作品性:「私性」「遊戯」を追求した作品
- 代表作:『遊戯』『洋子』『家族』『鴉』
- 回顧展や写真集の復刊により再評価されている
- 2012年に亡くなる
深瀬昌久さんの作品は身近な人々の私生活を題材にしています。
当時では、珍しい私生活に根ざした写真で、ミステリアスな雰囲気のある写真が特徴的です。
1970年代にはニューヨークの近代美術館の作品展に出品し、多くの注目を集めました。
しかし、1992年に転落事故により重度の後遺症を負い、活動できなくなり、2012年に亡くなります。
深瀬昌久さんが亡くなった後にも写真は評価され、2014年にはアーカイブスが設立。
展示活動や作品集が出版され、再び注目されるようになりました。
『MASAHISA FUKASE』
- 発行年:2018年
- 発行:赤々舎
- 製本:布貼り上製本
- サイズ:195mm×269mm
- ページ数:416ページ
この写真集は深瀬昌久さんの作品を時系列で整理し、全部で26章で構成されている写真集。
深瀬昌久の40年間のキャリアを包括する内容になっています。
妻、洋子の写真や愛猫サスケの写真、代表作『鴉』なども含まれていおり、ボリューム感もあり、壮大な作品集です。
416ページもあるので、読後感もすごく満足度の高いものになっています。
深瀬さんの生涯を映画化した作品も2025年に公開される予定で、そちらも楽しみです。
森山大道
- 1938年 大阪府生まれ
- 作品性:アレ・ブレ・ボケと言われる粒子感やピンボケが特徴的 モノクロ
- 代表作:『遠野物語』『光と影』など
- 国内外で高く評価され、多くの賞を受賞
- 現在も写真家の活動を続けている
森山大道さんは、「アレ・ブレ・ボケ」と呼ばれる独特の技法で写真を撮影しています。
【森山大道さんの写真の特徴】
- フィルムの粒子をより荒く
- 意図的に手ブレさせる
- ピントをあえて外す
- 大胆にトリミングする
- モノクロノーム
- 強いコントラスト
主に、ストリートスナップを撮影しており、街で見かけたことやい起こる出来事を瞬時にカメラに収めるスタイルです。
また、カメラへのこだわりのなさも有名で、特定のカメラにこだわらず、コンデジに始まり写ルンですやポラロイドカメラなど多岐にわたり使用しています。
カメラは「ただの道具」として使っており、どのようなカメラでも森山大道が撮った写真だとわかります。
ストリートスナップの中でも、「都市への欲望」をテーマとして表現することが多く、東京の新宿をよく撮影しているイメージがあります。
『光の記憶』
- 発行年:2023年
- 発行:求龍堂
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:297mm×210mm
- ページ数:336ページ
『光の記憶』は森山大道さんの60年にわたる写真活動の全体像を紹介する写真集です。
『写真よさようなら』『光の化石』『街』の3つのパートに分かれており、森山さんの作品を時系列で追うことができます。
現在森山大道さんの写真集は手に入りにくいのですが、『光の記憶』は森山さんの全貌を知るのにうってつけの一冊になります。
「アレ・ブレ・ボケ」の表現やストリートスナップなど多岐にわたる作品群。
ぜひ見てほしい一冊。
『Tokyo』
- 発行年:2020年
- 発行:光文社
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:297mm×210mm
- ページ数:336ページ
『Tokyo』は森山大道さんが60年近く撮影し続けた東京の写真をまとめた作品です。
新宿や渋谷など東京の特徴的な街並みがたくさん掲載されており、1枚1枚が森山さん独自の視点で捉えられています。
写真集としての価値もありながら、東京のガイドブックとしても活用できる一冊。
読めば、東京を撮りたくなる。ストリートスナップを撮りたくなる。
そんな一冊になっています。
奥山由之
- 1991年生まれ
- 慶應義塾大学法学部政治学科を卒業
- 作品性:日常に潜む非日常的な瞬間を捉えた作品が多い
- 代表作:『Girl』『BACON ICE CREAM』『flowers』など
- 写真新世紀優秀賞や講談社出版文化賞写真賞を受賞
- 写真家・映画監督として活動を続けている
奥山由之さんは、現役の若手写真家。そして、現在は映画監督としても活動しており、活躍の幅は多岐にわたります。
写真はフィルムで撮影し、日常の中に潜む非日常をを瞬間的に捉えている作品が多いです。
フィルムで非日常を捉えることの難しさは、写真をしている方からすれば、容易ではないことは想像できると思います。
フィルム自体も時代の流れで高騰する中、フィルムで撮る意味や残す意味を考えさせられます。
数々の賞も受賞しており、これからの活躍も楽しみな写真家・映画監督です。
『flowers』
- 発行年:2021年
- 発行:赤々舎
- 製本:ハードカバー
- サイズ:261mm×216mm
- ページ数:152ページ
『flowers』は亡き祖母との対話をテーマにした作品です。
この写真集は奥山さんの祖母が暮らしていた家が舞台で、現在は奥山さんのアトリエとなっている場所です。
様々なフィルムカメラが使用され、長年にわたり撮影された作品。
テーマを念頭に置きながら読み進めていくと、花が好きだった祖母の面影、家族の時の変化を感じる事のできる写真集です。
奥山さんの視点が入ることで、「祖母とどのよなことを話したかったのか」、など想像力を掻き立てられる一冊になっています。
『BACON ICE CREAM』
- 発行年:2015年
- 発行:パルコ
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:257mm×190mm
- ページ数:240ページ
『BACON ICE CREAM』は独特の世界観と表現で注目を集めた写真集。
奥山さんのデビューから現在に至るまでの写真をジャンルを超えて構成され、奥山さんの世界観を存分に感じることのできる作品です。
日常の中で見逃されがちな瞬間や場所、フィルムカメラで撮る独特の味わいが伝わってきます。
主題からあえてピントを外したアーティスティックな写真家ら、広告写真まで、違和感なく配列されていて、一つの物語を観ているようでした。
何度も見返してみたくなる、観るたびに違う感情が湧き出てくる。
奥山さんが表現できる「色・形・光」の全部が体感できます。
川島小鳥
- 1980年生まれ 東京都出身
- 早稲田大学第一文学部仏文科を卒業
- 写真家の沼田元氣に師事
- 作品性:作り込まない自然な姿を捉える
- 代表作:『未来ちゃん』『明星』など
- 講談社出版文化賞写真賞や木村伊兵衛写真賞受賞を受賞
川島小鳥さんは日常に潜む美しさや瞬間を捉えることが特に上手な写真家です。
作り込まない自然な撮影をすることで有名です。
被写体に対して指示を出したり、ポーズを取らせたりすることをせず、自然な姿を捉えることを重要視しています。
代表作『未来ちゃん』では、信頼関係を築くために未来ちゃんの家族と寝食を共にするなど、被写体の自然な姿を引き出しています。
川島さんの表現したいことを実現するために時間をかけたり、労力を惜しまなかったりすることで、素晴らしい写真になっています。
『未来ちゃん』
- 発行年:2024年(新装版)
- 発行:ナナロク社
- 製本:ハードカバー
- サイズ:219mm×148mm
- ページ数:208ページ
ベストセラーとなった『未来ちゃん』は新潟県佐渡島に住む3歳の少女を約1年にわたって撮影したシリーズです。
2011年に写真集として出版され、9万部を超えるベストセラーとなりました。
子供の無邪気さや生命力を捉えながら、同時に人間の本質を強烈な説得力で伝える作品として高く評価されています。
川島さんの撮影スタイルだからできた作品です。
何度見返しても、子供の輝きやパワーを感じる色褪せない写真集と言えます。
『明星』
- 発行年:2014年
- 発行:ナナロク社
- 製本:ハードカバー
- サイズ:245mm×240mm
- ページ数:240ページ
『明星』は、台湾での3年間にわたる撮影をまとめた作品です。
この写真集は、2015年に第40回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。
『明星』では台湾の文化や人々の生活を川島さんの視点から捉えており、日常の中の美しい瞬間などを伝えています。
梅佳代
- 1981年生まれ 石川県出身
- 作品性:「愛情と共感」「冷めた観察眼」
- 代表作:『うめめ』など
- 木村伊兵衛写真賞受賞を受賞
梅佳代さんは、日常の何気ない瞬間をユーモアある視点で捉え、あたたかさを感じる事のできる作風です。
人とのコミュニケーションを基本とし、その中から独自の視点で捉えることで、独特の表現をしています。
梅佳代さん自体が撮影に対して自然体であることで、被写体のリラックスした状態が撮影でき、等身大の姿を魅力的に捉えていることも特徴の一つです。
カメラやレンズ、設定もシンプルで選択肢の少ない中で撮影することで、梅佳代さんらしさが作品に反映されているのだと感じられます。
『うめめ』
- 発行年:2006年
- 発行:リトルモア
- 製本:ハードカバー
- サイズ:188mm×135mm
- ページ数:120ページ
梅佳代さんの初の写真集『うめめ』は写真集としては異例の13万部の大ヒットを記録。ベストセラーとなりました。
この作品で、写真家の新人賞である第32回木村伊兵衛写真賞を受賞しています。
『うめめ』は日常の中の独特な瞬間を捉えた写真集です。
観てもらうのが一番ですが、犬の頭の上に別の犬のリードが乗っている様子やお花見中のハゲ頭に落ちた桜の花びらなど、日常の面白さや可愛らしさを作品として伝えています。
読んでいて、幸せになる、くすっと笑えるすてきな写真集です。
浅田政志
- 1979年生まれ 三重県出身
- 大阪の日本写真映像専門学校卒業 2007年に独立
- 作品性:通常のアプローチとは違った「記念写真」
- 代表作:『浅田家』など
- 木村伊兵衛写真賞受賞を受賞
浅田政志さんの写真のテーマは「記念写真」。
ただ、普通の記念写真とは別物。
被写体との良好な関係性を構築することを大切にしています。
テーマの中心は「家族」であることが多いです。
セルタイマーを使用し、浅田さん自身も被写体として登場します。
作品は圧倒的にユーモアのある作品が多く、くすっと笑える写真が特徴的です。
三脚を使用して撮影することも多いようです。
理由は、コミュニケーションを取れるから。
三脚を使うことで、ファーンダーから目を話しながら、被写体とのコミュニケーションを取ることができるからだそう。
過去に『浅田家』は映画になりました。
写真を通して紡がれる人々。撮影風景の面白さや被写体との関係性など、写真を撮る者としていろいろ考えさせられる作品でした。
『浅田家』
- 発行年:2012年
- 発行:赤々舎
- 製本:ソフトカバー
- サイズ:257mm×182mm
- ページ数:106ページ
浅田政志さんの代表作『浅田家』は、自身の家族を被写体にして、ラーメン屋や消防団、極道などフィクションの設定での家族写真を撮影した作品です。
「記念写真」「家族写真」について考えさせられる一冊。
演出のすばらしさやユーモアセンス。
家族みんなで作り上げていく作品たち。
記念日はなかなか来ない。だから自分たちで作ろうというクリエイティブ魂の込もった写真集です。
まとめ|側にあるもの・ことを大切に撮影する
今回は「知っておくべき日本人写真家」というテーマで8人の写真家をご紹介しました。
どの写真家も日本を代表する写真家です。
私達の身近にあるものがテーマになっていたり、見落としていた一面に触れたりすることができるなど、読むことで見つかる新しい何かがあります。
写真集を読むことで、その人となりを想像したり、被写体との関係性を汲み取るなど、多くのことを考えることができます。
この記事が写真家の方々を知るきっかけとなり、見た人の世界が広がることを願っています。
最後まで読んでくださりありがとうございます。コメントなどいただけると、記事の質向上や励みになります。ぜひお願いします!
コメント